この記事でわかること
- 1万円未満でも相手方の確認と帳簿記載が要る品目(令和7年10月1日施行で4つ追加)
- 警察庁の通達の別表が、その改正に追いついていないこと
- 帳簿の保存期間の起算点が、紙と電磁的記録で違うこと
- 非対面の本人確認として警視庁が挙げている15種類
- 古物を受け取れる場所は、営業所か相手方の住所・居所に限られること
許可は入口です。取った後にかかる義務のほうが、日々の作業に効きます。 ここでいう帳簿は古物営業法第16条が定める取引の記録で、会計の帳簿とは別のものです。
許可そのものの取り方は古物商許可の取り方|個人が申請する手順にまとめました。
この記事の調べ方
この領域は、改正のたびに古い説明が残ります。実際、警察庁の通達の別表がそうなっています。
- 古物営業法と施行規則の現行条文(e-Gov法令検索)、警察庁「古物営業法等の解釈運用基準」(令和6年8月14日付・45ページ)、警視庁の各案内を直接あたりました(2026年9月13日確認)
- 2026年9月15日に、e-Gov法令検索のAPIで現行条文を取り直し、通達PDFも再取得して条番号と数値を1件ずつ照合しました。施行規則第16条第2項が7号立て(自動二輪車等/エアコン室外ユニット・電気温水機器のヒートポンプ/家庭用ゲームソフト/光学的方法により音又は影像を記録した物/電線/金属製グレーチング/書籍)であることは、この日の条文で確認しています
- 通達の別表と、令和7年10月1日施行の施行規則改正を突き合わせ、ずれている箇所を本文に明示しています
- 法令の解釈は自分で断定しません。条文に書いてあることは「〜と定められています」と書きます
- 個別のケースの可否は、所轄警察署の窓口へ確認する案内で止めます
- 税金の話は扱いません。ここでいう帳簿は古物営業法第16条の取引記録であって、会計帳簿・記帳ではありません。税務の取扱いは国税庁のページをご確認ください
この記事には広告リンクを1本置いています。レゾナンス(バーチャルオフィス)は当サイトが報酬を受け取る提携先です(2026年9月15日時点)。該当箇所のリンクは広告リンクで、記事中で参照している官公庁の資料とは無関係です。バーチャルオフィスの住所を古物商の営業所として使えるという意味ではありません。 その論点は別記事で扱っています。
結論:古物商は1万円未満でも確認が要る品目がある
結論
対価の総額が1万円未満の取引は、相手方の確認義務が免除されます(法第15条第2項第1号・施行規則第16条第1項)。ただし施行規則第16条第2項が例外の品目を並べており、令和7年10月1日施行の改正で4つ増えました。帳簿は3年保存で、起算点が紙と電磁的記録で分かれます。
相手方の確認義務と1万円ルール
法第15条第1項により、古物を買い受けようとするときは相手方の真偽を確認する措置をとります。 法第15条第2項第1号・施行規則第16条第1項により、対価の総額が1万円未満の取引は確認義務が免除されます。 警察庁の解釈運用基準は、この1万円に消費税を含まないと解されるとしています。
ただし、施行規則第16条第2項に例外の品目が並びます。 警視庁は、これらについて1万円未満の買受けでも「相手方の確認義務等」(相手方の確認義務および帳簿等への記載等義務)の対象になると案内しています。
| 品目 | 備考 |
|---|---|
| 自動二輪車及び原動機付自転車(汎用性の部分品を除く部分品を含む) | |
| エアコンディショナーの室外ユニット、電気温水機器のヒートポンプ | 令和7年10月1日施行で追加 |
| 専ら家庭用コンピュータゲームに用いられるプログラムを記録した物 | |
| 光学的方法により音又は影像を記録した物 | CD・DVD等 |
| 電線 | 令和7年10月1日施行で追加 |
| グレーチング(金属製のものに限る) | 令和7年10月1日施行で追加 |
| 書籍 |
出典: 警視庁「古物営業法施行規則の一部改正について(令和7年10月1日施行)」(2026年9月13日確認)
範囲についても案内があります。 警視庁は電線について、LANケーブルやテレビ接続ケーブル、延長コード、充電ケーブルなどは対象外とし、グレーチングについてはコンクリート製は対象外としています。
分割持ち込みの扱いにも触れておきます。 相手方が複数の物品を数回に分けて持ち込んだ場合、各回の対価の総額が1万円に満たなければ確認義務と帳簿記載義務は免除されると警察庁の解釈運用基準は示しています。 一方で、正当な理由なく数回に分けて売却することを希望する相手方については、警察官への申告義務が生じることがあるともしています。
その回に受け取った物品の対価の総額は、消費税を除いて1万円以上か?
1万円以上 → 相手方の確認と帳簿記載が必要
1万円未満 → 次へ
施行規則第16条第2項の7品目に当たるか?
当たる(バイク/エアコン室外機・ヒートポンプ/家庭用ゲームソフト/CD・DVD等/電線/金属製グレーチング/書籍) → 1万円未満でも確認と帳簿記載が必要
当たらない → 確認義務は免除
図の7品目は、施行規則第16条第2項の第1号から第7号をそのまま並べたものです。
品目別・金額別の一覧(通達の別表)
警察庁の解釈運用基準の別表に、品目別・金額別の一覧があります。1万円以上の取引がこちらです。
| 区分 | 相手方の確認 | 帳簿(買受け) | 帳簿(売却) |
|---|---|---|---|
| 美術品類、時計・宝飾品類 | ○ | ○ | ○ |
| 自動車(部分品を含む) | ○ | ○ | ○ |
| オートバイ、その部分品 | ○ | ○ | ○ |
| ゲームソフト等、CD・DVD等、書籍 | ○ | ○ | × |
| 上記以外の古物 | ○ | ○ | × |
1万円未満はこうなります。
| 区分 | 相手方の確認 | 帳簿(買受け) | 帳簿(売却) |
|---|---|---|---|
| オートバイ | ○ | ○ | ○ |
| オートバイの部分品(ねじ、ボルト、ナット、コード等を除く) | ○ | ○ | × |
| オートバイの部分品(ねじ、ボルト、ナット、コード等) | × | × | × |
| ゲームソフト等、CD・DVD等、書籍 | ○ | ○ | × |
| 美術品類、時計・宝飾品類、自動車、その他の古物 | × | × | × |
自動車については、引き渡した古物が自動車である場合は相手方の住所等の記載を不要とする旨が示されています。
この別表をそのまま使わないでください
別表は令和6年8月14日付の通達に付されたものです。令和7年10月1日施行の改正で追加された4品目(エアコン室外機、電気温水機器のヒートポンプ、電線、金属製グレーチング)は、別表に反映されていません。条番号も現行の施行規則第16条第2項とはずれています。この4品目は、警視庁の改正案内のほうを見てください。
帳簿の記載と保存
法第16条により、売買・交換のため古物を受け取り、または引き渡したときは、その都度記録します。
| 記載事項 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 取引の年月日 |
| 2 | 古物の品目及び数量 |
| 3 | 古物の特徴 |
| 4 | 相手方の住所、氏名、職業及び年齢 |
| 5 | 法第15条第1項によりとった措置の区分 |
「その都度」の意味も示されています。 警察庁の解釈運用基準は、古物を受け取り、または譲り渡したそのたびごとを指すとし、1週間分や1月分をまとめて記載するようなことは許されないと書いています。
保存期間は法第18条第1項です。起算点が2つに分かれている点に注意してください。
| 形式 | 保存期間の起算点 |
|---|---|
| 帳簿等 | 最終の記載をした日から3年間 |
| 電磁的方法による記録 | 当該記録をした日から3年間 |
表計算ソフトで記録する場合は、後者の読み方になります。
例外もあります。 書籍については、同一人から同時に受け取ったものをまとめて記載することが認められています。 「『書名』外○冊」「コミック○冊、文庫○冊、写真集○冊」といった例が示されています。 一方、CD・DVD等については原則どおり1品ごとに記載するとされています。
帳簿等をき損・亡失・滅失したときは、法第18条第2項により直ちに所轄警察署長へ届け出ます。
非対面の本人確認
ネット買取をするなら、ここが最大の作業になります。 警視庁は「非対面取引における確認の方法」として15種類を掲載しています。主なものを挙げます。
- 電子署名付きメールの受領
- マイナンバーカードの署名用電子証明書の提供
- 印鑑登録証明書と押印書面の送付
- 本人限定受取郵便物等の送付と到達確認
- 住民票の写しの受領+その住所あてに転送不要の簡易書留を送付して到達確認
- 住民票の写しの受領+記載された本人名義口座への代金入金
- 身分証明書のコピー+簡易書留の到達確認+口座振込
- すでに確認措置をとった相手へのID・パスワード付与
- 異なる身分証2点、または身分証コピー1点+公共料金領収書の送付と簡易書留の到達確認
- 古物商提供ソフトウェアによる本人確認書類の撮影画像の受信+簡易書留の到達確認
- ICチップ情報の受信+簡易書留の到達確認
- 容貌画像+写真付き身分証画像の受信
- 容貌画像+ICチップ情報の受信
出典: 警視庁「非対面取引における確認の方法」(2026年9月13日確認)
身分証のコピー1枚では足りません
警視庁は「古物商許可申請をされる方へ」のページで「単に『運転免許証のコピーの送付を受ける。』等の方法では不十分であり、古物営業法で定める確認を行ったことにはなりません」と案内しています。同じページに「古物商同士の取引であっても、取引の相手方の確認義務は免除とならない」とあり、リサイクルショップ等で仕入れる場合も確認が要ります。
もう1点、実務の落とし穴があります。 警察庁の解釈運用基準は、旅券(パスポート)は規則第15条第1項の「身分証明書等」に含まれないとしています。 所持人記入欄が発行元の了承なく記載できるため、住所を証する資料と言えない、というのが理由です。
代金の受け取り方はネットショップの決済サービス比較で整理しています。
古物を受け取れる場所の制限
見落としやすい条文です。 法第14条第1項は、古物商が古物商以外の者から古物を受け取れる場所を限定しています。 自分の営業所、または取引の相手方の住所もしくは居所です。
カフェやコンビニで待ち合わせて個人から買い取る形は、原則から外れます。 違反した場合、法第32条に1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が定められています。
例外は仮設店舗です。 あらかじめ日時と場所を、その場所を管轄する公安委員会に届け出た場合は受け取れます。 届出は施行規則第14条の2により、営業を営む日から3日前までに別記様式第14号の2で行います。
古物の受け取りを行わない出店については、警察庁の解釈運用基準が補足しています。 届出は要らないが行商に当たるため、許可証または行商従業者証の携帯義務や標識の掲示義務がある、という整理です。
営業所として使う住所そのものの検討は古物商許可とバーチャルオフィス|営業所の要件に、届け出た住所で郵便を受け取る方法は郵便物の転送サービス比較にまとめました。
レゾナンスの料金プランを見る東京・横浜・大阪の12拠点。特定商取引法の表記と郵便物の受け取りを目的とした住所です(古物商の営業所として使えるという意味ではありません)
貴金属を扱うなら別の法律もかかる
時計・宝飾品類を扱う人は、もう1つ確認してください。 警視庁は、犯罪による収益の移転防止に関する法律に触れています。 同法第2条第2項により、古物である貴金属等の売買の業務を行う古物商は特定事業者に当たる、という案内です(出典は「古物商許可申請をされる方へ」)。 そして特定事業者には、本人特定事項の確認義務や疑わしい取引の届出義務等が課せられているとしています。
古物営業法とは別系統の義務です。 扱う区分を決める段階で、頭に入れておいてください。 同じ犯罪収益移転防止法の特定事業者には、住所を貸す側のバーチャルオフィス事業者も含まれます(郵便物受取サービスと犯罪収益移転防止法)。
デメリットと、この記事が向いていない人
この記事は、義務を軽くする方法を書いたものではありません。 条文と通達に書かれていることを並べただけです。 個別のケースの可否も判断しません。 運用は都道府県で差があり、最終的な判断は所轄警察署にあります。
許可を取る前の段階にいる人は、古物商許可の取り方|個人が申請する手順を先にお読みください。
よくある質問
Q. 帳簿はエクセルで付けてもよいですか
A. 法第18条第1項は「電磁的方法による記録」を想定しており、その場合の保存期間は当該記録をした日から3年間です。紙の帳簿等(最終の記載をした日から3年間)とは起算点が違います。
Q. 1万円未満の仕入れも記録が要りますか
A. 原則は免除ですが、施行規則第16条第2項の品目は1万円未満でも対象です。令和7年10月1日施行の改正で、エアコン室外機・電気温水機器のヒートポンプ・電線・金属製グレーチングが加わりました。書籍やCD・DVD等、ゲームソフト等も対象です。
Q. カフェで待ち合わせて個人から買い取るのは問題になりますか
A. 法第14条第1項は、古物商以外の者から古物を受け取れる場所を営業所または相手方の住所・居所に限定しています。違反には法第32条で1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が定められています。仮設店舗については、3日前までの届出による例外があります。
Q. 古物商どうしの取引でも本人確認は要りますか
A. 警視庁は「古物商許可申請をされる方へ」で、古物商同士の取引であっても相手方の確認義務は免除とならないと明記しています。リサイクルショップ等で仕入れる場合も確認が要ります。
Q. パスポートで本人確認はできますか
A. 警察庁の解釈運用基準は、旅券は規則第15条第1項の「身分証明書等」に含まれないとしています。所持人記入欄が発行元の了承なく記載できるため、というのが理由です。
まとめ
- 1万円未満は確認義務が免除だが、施行規則第16条第2項の品目は例外。令和7年10月1日施行で4品目が追加された
- 警察庁の通達の別表は、その改正に追いついていない(追加4品目が未反映・条番号もずれ)
- 帳簿はその都度記載。1週間分・1月分のまとめ書きは許されない
- 保存は3年。起算点は紙が「最終の記載をした日」、電磁的記録が「当該記録をした日」
- 非対面の本人確認は警視庁が15種類を掲載。身分証のコピー1枚では足りない
- 古物を受け取れるのは営業所か相手方の住所・居所。仮設店舗は3日前までの届出で例外
- 貴金属等を扱うなら、犯罪収益移転防止法の特定事業者としての義務も乗る
運用は都道府県で差があり、改正もあります。申請・運用の前に、所轄警察署の窓口とe-Gov法令検索で最新の内容をご確認ください。
参考・出典
2026年9月13日に確認し、2026年9月15日に条文・通達・警視庁の各ページを取り直して照合しました。
- e-Gov法令検索 古物営業法(令和7年6月1日施行の現行版)/古物営業法施行規則(令和8年8月12日施行の現行版)
- 警察庁「古物営業法等の解釈運用基準」(令和6年8月14日付)
- 警視庁「古物営業法施行規則の一部改正について(令和7年10月1日施行)」
- 警視庁「非対面取引における確認の方法」
- 警視庁「古物商許可申請をされる方へ」(更新日2025年2月7日。相手方の確認義務・古物商同士の取引・貴金属等の特定事業者の記載はこのページ)