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郵便物受取サービスと犯罪収益移転防止法

公開 2026-09-15
※本記事にはプロモーション(広告)を含みます。

この記事でわかること

  • バーチャルオフィスが法律に名指しで書かれている条文の場所
  • 事業者にかかる5つの義務と、そこから逆算される「申込者に何が求められるか」
  • 行政資料の条番号が42号と44号で食い違う理由と、現行がどちらか
  • 本人確認の方法が3通りしかない理由

バーチャルオフィスを申し込むと、職業や利用目的を聞かれます。住民票を出せと言われることもある。 住所を貸すだけのサービスで、なぜそこまで聞かれるのか。答えは、法律が事業者にそれを義務づけているからです。

郵便物受取サービス業者は、犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)の「特定事業者」です。 届出も許可も要らないのに、義務だけがかかる。この記事は、その根拠を行政資料の原文で追いかけたものです。

この記事の調べ方

この領域の解説は、条番号だけが引用されていて原文にあたっていないものが多くあります。 実際、行政資料のあいだで条番号が食い違っていました。

  • 経済産業省が公開している4資料(Q&A・ガイドライン・周知資料・疑わしい取引の参考事例)を直接取得して読みました
  • 資料間で食い違っていた条番号は、e-Gov法令検索で現行条文を取得して確かめています。2026年9月15日にe-Gov法令検索のAPIで現行条文(令和8年8月12日施行)を取り直し、第42号=宅地建物取引業者、第43号=貴金属等の売買を業として行う者、第44号=郵便物受取サービスであることを再確認しました
  • 確認できなかった項目は「確認できず」と書いています
  • この記事は法令の解説であり、個別の申込についての判断を代わりに行うものではありません。 最終的な取扱いは各事業者と所管の行政庁に確認してください
  • この記事の本文には、本人確認の節にレゾナンスの広告リンクが1か所あります。当サイトはレゾナンス・バーチャルオフィス1・Karigo・METSオフィス・0円バーチャルオフィスと提携しており(2026年9月15日時点)、記事内リンク先にもその広告リンクを含むページがあります

結論:郵便物受取サービスは、名称を問わず特定事業者になる

結論

「バーチャルオフィス」「私設私書箱」「レンタルオフィス」「海外転送サービス」「電話秘書代行」——名称が何であれ、自分の住所を顧客の郵便物の受取場所として使わせる事業は、犯罪収益移転防止法第2条第2項第44号の特定事業者に当たります。だから審査があり、職業と利用目的を聞かれます。

経済産業省の「犯罪収益移転防止法に関するQ&Aについて(郵便物受取サービス業者)」(令和8年5月)は、冒頭の問1でこう書いています。

「郵便物受取サービス業者」については、犯罪収益移転防止法第2条第2項に定める「特定事業者」の一つとして、同条同項第44号に規定されています。 具体的には、「私設私書箱」、「バーチャルオフィス」、「レンタルオフィス」、「海外転送サービス」、「電話秘書代行」等いかなる名称をもって顧客と取引しているかを問わず、(中略)すべての要件を満たすサービス(郵便物受取サービス)の提供を行う事業者をいいます。

法律の条文解釈のなかに「バーチャルオフィス」という語が名指しで置かれています。 同Q&Aによれば、事業者には5つの義務がかかります。取引時確認、確認記録の作成・保存、取引記録の作成・保存、疑わしい取引の届出、これらを的確に行うための措置です。

5つのうち申込者が直接触れるのは取引時確認だけですが、残りの4つも申込者の体験に影響します。 書類が7年間保存されるのも、申し込んだだけで届出の対象になりうるのも、この4つが理由です。

条番号が資料によって違う:42号か44号か

ここは実際に引っかかった点なので、検証の経過ごと書きます。

同じ経済産業省の資料でも、「疑わしい取引の参考事例」(平成31年4月1日版)は条番号を「第2条第2項第42号」と記載しています。 一方、令和8年5月版のQ&Aは「第44号」。どちらが現行かを、e-Gov法令検索の条文そのもので確かめました。

2026年9月14日時点で表示される現行条文(令和8年8月12日施行)の第2条第2項第44号が、 「顧客に対し、自己の居所若しくは事務所の所在地を当該顧客が郵便物……を受け取る場所として用い……ることを許諾し」と定める号でした。 現行は44号です。 42号は宅地建物取引業者、43号は貴金属等の売買業者の号にあたります。

古い資料の号数がそのまま引かれている解説は珍しくありません。条番号で調べ物をするときは、資料の発行年月日を先に見てください。

郵便物受取サービスで確認されるのは「あなたが誰か」だけではない

同Q&Aの問4は、通常の取引で確認すべき事項をこう定めています。

郵便物受取サービス業者は、「本人特定事項」及び「取引を行う目的」に加え、顧客が自然人(個人)の場合は「職業」、顧客が法人の場合は「事業の内容」及び「実質的支配者」を確認しなければなりません。

顧客の区分確認される事項
個人本人特定事項(氏名・住居・生年月日)/取引を行う目的/職業
法人本人特定事項(名称・本店または主たる事務所の所在地)/取引を行う目的/事業の内容/実質的支配者

法人の申込で株主名簿を求める事業者があるのは、この「実質的支配者」の確認のためです。 同じ「実質的支配者」の確認は、法人が銀行に口座を申し込むときにも行われます(バーチャルオフィスで法人口座|審査要件と実績の読み方)。 個人事業主については、問8が「自然人(個人)の顧客に対する取引時確認の方法により確認を行ってください」としています。 屋号があっても、確認されるのは個人としてのあなたです。

「郵便物の受取」は取引を行う目的にならない

問10は、目的の書き方について踏み込んだ注意を置いています。

自己の住居での受取りではなく、あえて郵便物受取サービスを利用する動機が不明なもの(「郵便物の受取」等)については、「取引を行う目的」には当たりません。

「郵便物を受け取るため」は、目的として認められません。 同Q&Aが参考類型として挙げているのは、次のようなものです。

  • セキュリティー対策のため
  • プライバシー保護のため
  • 自社/自己宛ての大量の郵便物・書類の保管のため
  • 賃借料金や保管業務コスト削減のため
  • 郵便物・書類管理の能率を向上するため

申込フォームの選択肢がこうした文言になっているのは、この類型に沿っているからです。自分の実態に合うものを選ばないと、あとで説明がつかなくなります。

本人確認の方法は3通りしかない

事業者ごとに書き方は違っても、方法そのものは法令が定める枠の中にあります。 経済産業省の周知資料(令和8年5月)から、申込者側に効く条件を抜き出します。

eKYC(オンラインで顔と身分証を撮る方式)

ソフトウェアは、第三者が開発し郵便物受取サービス業者に提供したものも可。ただし、画像情報の加工機能がないものであることが必要

本人確認用画像情報は、あらかじめ撮影されたものや、(中略)確認に支障が生じるものは不可

事前に撮っておいた写真は使えません。 その場で撮る前提の方式です。

書類の写しを送る方式

同じ周知資料に「本人確認書類の写しは令和2年4月1日から2点必要」と書かれています。 1点しかない場合は、現住所の記載がある補完書類(税金・社会保険料・公共料金の領収書など)の写しで代えられます。 補完書類は、領収日付または発行年月日が6か月以内のものに限られます。 この方式では、事業者が身分証記載の住所に転送不要の書留郵便等を送り、受け取れて完了します。

対面での確認

来店して書類を提示する方式です。店舗を持つ事業者でしか選べません。

どの方式を採るかは事業者が決めます。申込前に中身を読んでおきたいなら、本人確認と審査を独立したページで公開しているレゾナンス(当サイトの提携先)が確認しやすい。各社の方式と必要書類を並べた一覧はバーチャルオフィスの審査にあります。

レゾナンスの料金プランを見る

本人確認はeKYCまたは書類の写し。東京・横浜・大阪の12拠点で、来店受取にも対応しています

2026年5月のガイドラインは「謝絶」の両側を書いている

経済産業省「郵便物受取サービス業におけるマネー・ローンダリング、テロ資金供与及び拡散金融対策に関するガイドライン」(2026年5月29日)の顧客管理の項に、対になる2文があります。

必要とされる情報の提供を利用者から受けられないなど、自らが定める適切な顧客管理を実施できないと判断した顧客・取引等については、取引の謝絶を行うこと等を含め、リスク遮断を図ることを検討すること その際、マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の名目で合理的な理由なく謝絶等を行わないこと

読み方はこうなります。

  • 情報を出さない申込者は断られうる(書類や事業説明を出し渋ると落ちる)
  • 一方で、対策の名目で合理的な理由なく断ってはいけない(正当に説明できれば、断る側にも説明責任がある)

同ガイドラインは、リスクが高い取引について「取引開始前又は多額の取引等に際し、営業実態や所在地等を把握するなど追加的な措置を講ずること」も求めています。 一部の事業者が事業計画書や契約書のコピーを求めるのは、この線に沿った動きです。

疑わしい取引の届出は、契約しなかった場合にも及ぶ

「郵便物受取サービス業者における疑わしい取引の参考事例」(平成31年4月1日版)は、注意を払うべき類型を挙げています。

自らの本人確認書類の内容や自社の事業内容について答えられない、あるいは辻褄の合わない回答をする顧客との取引。

取引時確認において確認した取引を行う目的、職業又は事業の内容等に照らし、不自然な態様・頻度で行われる取引。

同一名義人である顧客が複数の法人名義で郵便物受取サービス契約を希望する取引。

申し込んだだけでも対象になる

同じ資料は「契約の成立・不成立にかかわらず、疑わしい取引だと判断したときは届出をする必要があります」としています。契約に至らなかった申込も、届出の対象になりえます。実態と違う自己申告で通そうとするのは、割に合いません。

記録は解約後7年間残る

同Q&Aの問13は、確認記録と添付資料を「郵便物受取サービスに係る契約が終了した日から7年間保存する義務があります」としています。 提出した身分証の写しは、解約したあとも7年間、事業者の手元に残ります。

各社ともこの点は明示しており、たとえばレゾナンスは「ご提出いただいた書類について、第三者に開示することはありません(法律に基づく開示命令があった場合を除く)」と書いています。 ただし事業者によっては、規約違反による強制解約の場合に第三者への開示を留保している例もあります。各社の扱いの違いはバーチャルオフィスの審査|落ちる理由と書類にまとめました。

よくある質問

Q. 郵便物受取サービス業をやるのに、届出や許可は要りますか?

A. 経済産業省のQ&Aによれば、届出や許可は不要です。ただし特定事業者として5つの義務がかかります。

Q. 古物商も特定事業者ですか?

A. 古物である貴金属等の売買の業務を行う古物商は、同じ犯罪収益移転防止法第2条第2項の特定事業者に当たると警視庁が案内しています。古物営業法側の義務とは別系統です(古物商の帳簿と本人確認|許可後の義務)。

Q. レンタルオフィスやコワーキングも特定事業者ですか?

A. 問1は「レンタルオフィス」も名称の例として挙げています。名称ではなく、顧客の郵便物を受け取らせるサービスの要件を満たすかどうかで決まります。

Q. 個人事業主が申し込む場合、屋号で確認されますか?

A. 問8により、自然人(個人)に対する方法で確認されます。屋号ではなく個人としての本人特定事項です。

Q. 健康保険証は本人確認書類に使えますか?

A. 令和8年5月版のQ&Aは、健康保険や国民健康保険などの被保険者証について「全て本人確認書類としての有効期限(令和7年12月1日)が切れていることから使用できません」と注記しています。資格確認書は引き続き掲載されています。

Q. 提出した書類はいつまで保管されますか?

A. 契約が終了した日から7年間です(問13)。

まとめ

  • 郵便物受取サービス業者は、犯罪収益移転防止法第2条第2項第44号の特定事業者。名称は問わない
  • 条番号は資料によって42号と表記されているものがあるが、現行は44号(e-Gov法令検索の条文で確認)
  • 確認されるのは本人特定事項・取引を行う目的・職業(法人は事業の内容と実質的支配者)
  • 「郵便物の受取」は取引を行う目的にならない
  • eKYCは事前撮影の写真が使えない。写しを送る方式は令和2年4月1日から2点必要
  • 確認記録と書類の写しは、解約後7年間保存される

各社が実際にどの方法を採っていて、どんな書類を求めるかはバーチャルオフィスの審査|落ちる理由と書類で8社分を一覧にしています。 料金と拠点の比較はバーチャルオフィスおすすめ9社|個人事業主の比較、郵便物の転送だけが目的なら郵便物の転送サービス比較10選にまとめました。

参考・出典

すべて2026年9月14日に確認しました。

この記事を書いた人

カイ — ネット物販の事業インフラ(住所・許可・口座・決済)を実際に自分で契約・申請し、その手順と所要日数を記録しています。